こんにちは、ななおです。
前回はこちら19話:気づきからどうぞ。
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見えない糸
しげきに告白して振られてから、気づけば5カ月が過ぎていた。
もうすぐ冬が終わって春が来るという頃、しげきが驚くことを言い出した。
「俺、お前とおんなじバイト先になるわ」
部活が終わったあとに帰るタイミングが重なって、なんとなく一緒に電車に乗っていた時だった。
私たちは偶然同じ塾で塾講師のアルバイトをしていて、しげきはO校舎、私はK校舎に勤務していた。
「え、そうなの?そっちの校舎は?」
「つぶれるらしい。だから俺はそっちの校舎に移動になる」
アルバイトを始めた当初、私はしげきに夢中だった。
だから、しげきと同じ場所で働けるように、こっそりO校舎での勤務希望を出していた。けれども会社側の都合でそれは叶わず、結局K校舎に配属されていたのだった。
そんなことがあったから、まさかO校舎がつぶれて、しげきがK校舎にやってくるなんてことがあるのかと、心底驚いた。
なんという偶然だろうか。ある意味奇跡ではないかとも思った。
もちろん、同じバイト先になったからと言って、私が彼と付き合えるわけではない。
それは十分わかっていたし、しげきに振られた過去があることを忘れたわけでも決してなかった。
けれどやはり、しげきと同じ場所で働くことができるということは、純粋に嬉しいと思えることだった。
しかし素直に喜びそうになった時にふと、もう一つの可能性を思いついてしまった。
「それって、O校舎の人がみんなうちの校舎に来るってこと?」
そう言った時に私は、一人の女性をイメージしていた。
会ったことはないけれど、おそらくは長い黒髪で、一つ年上の、清楚でお嬢様のような雰囲気を持った人。
しげきが好きな相手であり、私がしげきに振られる原因になった人だ。
しかしそんな懸念をさらりと流すようにしげきが言った。
「いや、K校舎に行くのは俺だけだと思うよ」
その言葉に内心少しホッとした。
そしてしげきだけが私と同じ校舎に移動になるなんて、尚更奇跡だと思った。
私達は何か、目に見えない糸でつながっているのではないかとさえ感じた。
数週間後、本当にしげきはK校舎に移動してきた。
私もしげきも大体週に2,3回バイトが入っていたし、さらにそれは部活のない日だったから、私たちの勤務日はかなりの確率で重なっていた。
つまり私たちは部活で3回、バイト先で2,3回、合わせると週に5,6日顔を合わせることになったのだ。ほぼ毎日だ。
それまでもよく話す仲だったし、振られた後も表面上はそれまでとあまり変わらず過ごすことが多かった。部活のあとにタイミングが重なれば一緒に帰ることもあった。
けれどバイト先が一緒になってからは、バイトからの帰り道やバイト先での飲み会など、今まで以上にしげきと一緒にいる時間が増えていった。
そしてそんな中、ある飲み会の席で、少し離れたところにいるしげきの声がチラリと聞こえた。
「何回か遊びに行ったんだけどね」
思わず耳を澄ませてしげきの声に聞き入る。
居酒屋のざわめきの中で、右耳に全神経を集中させる。
「結局だめだったね。もう会うのやめましょうって言われちゃった」
心臓がドキリとした。
「会うのをやめましょう」としげきに告げた相手は、おそらく一人しかいない。清楚な雰囲気の年上の女性で、しげき曰く、私が “2番目” だとすると、“1番目” の相手だ。
つまりしげきは、その “1番目” の女性に振られてしまったのだ。
しげきをちらりと見ると、少し下向き加減だったけれど、そこまで悲痛な表情をしているわけでもなかった。
もうすぐ3月になろうかという時期で、最初の告白から半年が経とうとしていた。
つづく(21話:2度目の告白)
バイト先が重なったときは、「奇跡」だと思いました(笑)
本当にこのあとしばらくは毎日のように顔を合わせていました。
やっぱり見えない糸でつながっていたんだろうなぁと、今でも思っています。
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
そんな私ですが、心に余裕を持つことで大逆転を果たし、彼に告白されるまでになりました。
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