こんにちは、ななおです。
前回はこちら、30話:亮太から。
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迷い
夏が過ぎてゆくのと同じくらいゆっくりなスピードで、けれども確実に、亮太に対する自分の気持ちが変化してきたことに気がついていた。
純粋に恋人としての関係性を楽しむことよりも、研究対象のように彼の動向を観察することの方が増えてきた。
どうやらスカイツリーに行った時の違和感が、私に彼との関係に疑問を抱かせ、そしてそれが他の小さな違和感達と結びついていったようだった。
付き合い始めてしばらくは、確かに楽しくて希望に満ちていた亮太との関係が、少しずつ掴みどころのないものになってきていた。
そう、私は亮太のことが掴めなかったのだ。
私の話を「うんうん」と頷きながら聞いてくれるところは最初の頃から何も変わらない。けれども最近、その頷きには何の意味も込められていないのではないかと思うようになった。
そして私が思い至ったのは、彼の態度が「傍観」を示しているということだった。
私の話を否定するわけではないけれども、決して興味を持つわけでもなく、もちろん意見を持つでもない。ただ、少し距離を置いて「傍観」しているように見えるのだ。
仮にもしそうだとしたら、亮太は私の話を聞いていて楽しいのだろうか。話を聞いてるふりをしながら、内心は私に対してただ気を使っているだけなのではないだろうか。
そこまで考えて、ふと気づいた。
そんなことを言ったら、私の態度だって同じじゃないか。
いつも落ち着いている亮太がたまに熱くなる野球の話を、「へー、そうなんだ」と頷いて聞いているふりをしながら、傍観を決め込んでいる。心のどこかで、私には関係ないものとして受け流している。
もともと、小さい頃から野球に興味を持てなかったことも相まっているのだろうけど、それにしても亮太を知ろうとする努力を怠っているのは明らかだ。
きっと私は心のどこかで、亮太と深く関わることを、まだ拒否しているのだ。
そのことに気が付いて、愕然とした。
私は亮太と正面から向き合っているつもりだった。けれどもしかしたら、とても表面的なところでしか私たちは結びついていなくて、本当はお互いに心の奥底を隠し合ってるんじゃないだろうか。
だとしたら、私たち二人はお互いに傍観を決め込んで、一体何をしているのだろう。この関係から、この先どんなことが得られるというのだろう。
「恋」ってなんだろう、「付き合う」ってなんだろう、どうして私は亮太と付き合っているのだろう。
そんなことばかりをぐるぐると考えるようになっていた。
すっかり日の暮れた駅前の暗がりに、ひっそりと佇む女性が、いち、に、さんにん。
彼女たちは今日は一体何人の客を捕まえることができたのだろう。彼女たちは自分の身体をお金で売って、いったいどんなことを考えているのだろう。彼女たちは、今までにいったいどんな恋愛をしてきたのだろう。彼女たちは、私の頭の中を占めているグルグルを過去に経験したことがあるだろうか・・・。
通り過ぎ様に一瞬目があったひとりの女性の眼が、私に語りかける。
「恋が分からないなら、たくさん経験すればいいじゃないの」
と。
そうか、と思った。恋愛が分からないなら、数をこなすことで探していけばいいのだ。そしてそこにお金が介在していたとしたら、後腐れなくたくさんの人と関係を結べるかもしれない。そう、彼女のように。
つづく(32話:キャバクラへ)
付き合って二カ月くらいのころには、もうこの違和感が出てきてしまっていました。。。そしてこの頃は本当に未熟で(今もですが)、考えることが突拍子もないなぁと思います(笑)
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
そんな私ですが、心に余裕を持つことで大逆転を果たし、彼に告白されるまでになりました。
私にもできたのですから、誰でも余裕を持つことで素敵な恋愛ができるはずです。
余裕は身に着けることができます。
単なるアニメオタクが余裕を得てイケメンに告白されるまでの過程を、下記の記事では公開しています。