草食系男子との3年間㊶:ただの後輩 ~ななお篇~

 

こんにちは、ななおです。

前回はこちら、40話:一番の女友達から。

目次はこちらから。

 

ただの後輩

 

春休みが終わり、私は大学3年生に、しげちゃんは4年生になった。

そんな新学期の始め、大学の自分用の連絡ポストを覗いてみると、一枚のチラシが入っていた。

それは「パプーシャの黒い瞳」という映画のチラシで、印象的な瞳をした一人の女性の姿が描かれていた。

普段あまり映画に興味を持たないタイプだったのだが、なんとなくその女性の姿には魅入ってしまった。

「ちょっと面白そう?」そんなことを考え、チラシを鞄に仕舞い込んだ。

 

家に帰ってもう一度そのチラシを眺め、インターネットで検索して予告PVを見る。モノクロの映画がジプシー女性の生き様を描き出していて、独特の世界観をかもしだしていた。

「やっぱり面白そうだな」

そう思った時、ふと、もしかしたら、しげきもこれに興味があるんじゃないだろうか?と思った。

いや、きっと彼は興味がある、なんとなくそんな確信があった。

 

『これ、興味ある?』

 

予告編のURLをラインで送ってしげきの反応を見る。

するとやはり、

 

『あ、これね、興味ある!面白そうだよね』

 

と、良い返事が返ってくる。

「やっぱり!」と、予想通りの反応に胸を躍らせ、

 

『一緒に見に行かない?』

 

そう続けてメッセージを送った。

すると、

 

『う~ん、2人でってのは行けないかなぁ』

 

さっきとは打って変わって、急に返事が鈍くなる。

そこで、

 

『別に、今更付き合おうなんて口説いたりしないよ?笑』

 

しげきが私を警戒しているのだと感じた私は、素直にそう伝えた。

実際、本当に告白なんてするつもりはなくて、ただしげきと一緒に遊びにいくのを楽しみたかっただけだった。

けれど、

 

『うん、それは分かってるけど、でもやっぱ、もし他の後輩がこのこと知ったららどう思うかなって。だから2人では行けないかな』

 

しげきはそう言って誘いを断ったのだった。

 

確かに、しげきの言い分はある程度理にかなっている。もし彼が、本当に部の後輩を平等に扱うために誘いを断ったのなら、私はそれ以上反論する術を持たない。

けれど本当にそれだけだろうか?誘われた相手が「私だから」断った部分も、やはりあるのではないか?

そんなことがモヤモヤと胸の中を渦巻いたけれど、「先輩として」という大義名分を持ち出されてしまっては、やはり何も言い返せなかった。

 

『わかった。じゃあいいわ』

 

そういって大人しく引き下がった。

 

しげきにとって、私は仲の良い女友達ではある。それはきっと確かだけれど、でもそれ以上に、きっと私は「ただの後輩」なのだ。

先輩として面倒をみるべき一後輩であって、彼にとっては「友達としての私」より、「後輩としての私」との付き合いの方が重要なのだ。

私はしげきにとって、ただの後輩でしかなかった。

 

つづく(42話:片思いの結論

 

この時は、ショックというより、「やっぱりそうなのか。。。」としみじみと現状を受け入れるような心境でしたね(笑)

 

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