こんにちは、ななおです。
前回はこちら、49話:真夜中の会話から。
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しげきの異変
翌週、マサトは授業に来なかった。ラインでは卒業論文が佳境に入って余裕がなくなったと言っていた。その代わり、12月上旬に少し落ち着くから、その頃にまた遊びに行こうと言ってくれた。
マサトの態度が変わったのが自分のせいであることは十分に分かっていた。あのとき私が送ったラインは、まるでマサトを遊び相手であると宣言しているようなものだ。それに対するマサトの対応は極めて正しいものだろう。
これは全て、自分の気持ちがはっきりしないことに起因している。
私はそろそろ、しげきを想い続けるのか、それとも新しい恋に進むのかをはっきり決めなければならなかった。
だから私は、しげきをデートに誘うことを心に決めていた。これでもう本当に最後だ。しげきが応じなかったら私はもう二度としげきを遊びに誘うことはしないし、しげきを好きでいることも忘れるようにしよう。そしてその時私はきっと、迷いなくマサトを一番好きだと言えるようになるのだ。その時になってマサトがまだ私のことを見ていてくれるかは分からないけど、その時はその時だ。
思い立ったら吉日を地で行く私は、すぐにラインを送った。
『今度、遊びに行かない?』
あえて「ご飯に」とも、「映画に」とも言わなかった。デートの目的はただ私と2人で遊ぶことで、そうすることでしげきへのハードルを一番高く設定したつもりだった。
いつものようにしげきが誘いを断ったら、私の本気の恋愛対象がしげきではなくマサトに代わるだけだ。だから別に断られても全然良かったし、むしろ、そうなることを望んでもいた。
けれどもしげきは私の期待を見事に裏切った。
『いいよ、いつがいい?』
驚いた。目的も何もないただの遊びに、しかも私と2人で出掛ける遊びに、しげきが乗ってくるなんて。
『まじで?なら、ちょっと急だけど今週の日曜とかは?』
『今週は空いてないな、ごめん』
そうか、ほんの少し残念だけれど、そもそもしげきと遊びに行くなんてことは起こるはずがないのだ。
けれども、続けて送られてきた文言に眼を見開く。
『来週の日曜なら空いてるけど、どう?』
『あ、うん、私も大丈夫。じゃあ、その日で』
数分の間に行われたやり取りを、まるで何かの間違いであるかのように眉をひそめながら読み返す。
たった今、しげきは確かに、なんの目的もない遊びへの誘いに応じたのだ。それも、日程が合わないから、代わりに代替案を出してまで。
おかしなことが起っていることだけは分かっていた。過去2年半片思いを強いられ、何度もデートの誘いを断られてきた私だからこそわかる、しげきの異変。
しげきの中で何か変化が起きていることは確かだった。
『来週、先輩と遊びに行くことになった。とりあえず遊ぶだけ遊んで、自分の気持ちを確かめてみようと思う』
どうせマサトにしげきへの未練を知られてしまったのなら、今更隠していてもしょうがないだろう。それに、12月になるまでマサトに会えないのだから、それまで話すきっかけが欲しかったのもある。
この頃はマサトからの返信はほぼ一日に一通くらいの頻度で、会話らしい会話ができていなかった。
『そっか、よかったじゃん。感想教えてね』
翌日になって返ってきたマサトの返信は、やはり少しそっけなかった。
つづく(51話:ありえない偶然)
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
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