こんにちは、ななおです。
前回はこちら、53話:クリスマスの約束から。
目次はこちらから。
ホテル行こうか?
12月の2週目、久しぶりにマサトが授業に顔を出した。
マサトがいない教室が当たり前になっていた私は、途中から入ってきたマサトをみて、こぼれ出る笑顔を隠すことができなかった。
少し髪が伸びたマサトは、やっぱり私好みのルックスをしていて、相変わらず良く通る声で鋭い質問を飛ばしていた。
「髪、伸びたね」
久しぶりの帰り道を一緒に歩く。
「うん、すげー伸びた。最後に会ったの、3週間前だもんな」
軽く空を見上げて少し考えながらマサトがいう。心なしか、マサトも少しテンションが高いように見えた。
「そうだよ、マサトがドタキャンするから」
「そっか、ごめん。あてか、やっぱ12月もしばらく忙しいから会えないわ。授業ももう来ないし。だから下旬以降になる。20日過ぎとか」
元カノには会いに行くくせに。出かかったそんな言葉を飲み込む。分かっている。私と元カノの間には超えることのできない順位の差があるのだから。
「おっけ、卒論だもんね。頑張って」
「おう」
「…あ、そういえば」
言うべきなのか一瞬迷いながら、けれどもう隠すことでもないし、言うことにした。
「先輩と、クリスマスイブに遊ぶことになった」
「マジで」
「うん」
一瞬マサトは考えるような風を見せ、そして
「告白すんの」
と聞いた。
「ううん、そういうことは考えてないよ」
これも正直に言う。私からしげきに告白することは、もう今後一生ないだろう。
「ふ~ん」
マサトはちらりと私をみると、ふっと頬に笑みを乗せ、言った。
「ダメだったら、ホテル行こうか」
すぐにはその意味がわからなかった。一拍おいて、ホテル、の意味を理解する。
あぁ、ホテルに行って、セックスしようか、という意味だ。
「んー。でも私、初めては本当に好きな人にあげたいんだよね」
嫌な気持ちはしなかった。ただ、自分なりの条件を提示する権利は私にもある気がした。マサトにはとてつもなく惹かれているけれど、私の初めてをあげたい相手は、別にいる。
目の前にいる相手に対して失礼な発言であることも分かってはいたが、そこは私たちはお互い様だ。
「いいよ、俺別にそこにこだわりないし。嫌なら最後まではやらないよ」
予想外に、あっさりとした反応が返ってきた。
きっと他の人だったら、ホテルに連れ込みたいがために調子のいいことを言っているのだと思うだろう。けれどマサトは、きっと本心でその言葉を言っている。そんな気がした。
「なら、いいよ、前向きに考えましょう」
冗談めかしてそう言うと、二重の眼を細めて、マサトも笑った。
つづく(55話:クリスマスデート)
今振り返るととても危うい橋を渡っているなという気がします。でもこの時はこれしか考えられなかったんですよね。しげちゃんかマサトか、どちらかを切り捨てるということができませんでした。
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
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