こんにちは、ななおです。
前回はこちら、56話:8年後の未来から。
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二番目同士
年が明けたばかりの1月2日、三が日でいつもよりも極端に人通りが少ない新宿に、私とマサトはいた。
12月下旬に会う約束はなんとなく年明けに延期されていて、マサトと2人でのデートは随分久しぶりだった。
「卒論どう?」
チェーンの居酒屋に入って向き合って座り、最近の様子を聞く。
「とりあえず形にはなったよ。もうすぐ出せる」
「おー、おめでとう」
「そっちは?そろそろ卒論のテーマとか決め始めないとじゃね?」
ふいに自分に話を振られて少々困惑する。確かに4月になったら4年生だけれど、まだ卒論のことなんてろくに考えていない。そんな私の様子を見透かしたのか、そこからしばらく懇々と説教をされる。
この人といるともっと自分も頑張らなくては、一生懸命やらなくてはという気にさせられる。そんなところがマサトに惹かれたところであり、けれども同時に少し、自分が疲れてしまうところでもある。
「うん、わかった、考える」
久しぶりのデートだというのに少しテンションが下がり気味になりつつも、なにも反論できないので、そういうしかない。
「そういえば、クリスマス、どうだった」
私のテンションが下がったのを察したのか、それとも一通り説教が終わったのか、マサトが話題を変える。
「あ、クリスマス、楽しかったよ」
「プレゼントもらった?」
「ううん、もらってない。てか、私もあげてない。」
言いながら、クリスマスにはプレゼントが付き物だったことを今更ながら思い出した。お互いに用意してなかったから良いものの、何か渡すべきだったのかもしれない。
一人頭の中で考え事をする私の深層心理まで見透かそうとするかのように、じっとマサトが私を眺める。だから考え事を終わらせると、そんなマサトを見返し、逆に質問をする。
「マサトは?元カノとのデート、どうだった?」
その瞬間、マサトを包む空気がぐらりと揺れ、視線をさっと左に逸らす。
「別に、なにもないよ」
分かりやすい人だ。好きな人の話をされただけでこうも極端に動揺する。
「そうなんだ、残念だね」
動揺したことを恥ずかしく思ったのか、マサトはすぐに視線を戻し、もう一度私の目を正面から見つめた。その眼を見返しながら、見覚えのある眼だと思った。
私はこの眼を知っている。それは、1年以上前に中央線沿いのファミレスで別れ話をした時の、亮太の眼だ。
自分にとって心から大切な人のことを想っているときの、眼だ。
マサトが元カノとどんなデートをしたかとかどんな会話をしたのかより、それが一番の答えだった。そして、それで良いと思った。
なぜなら、それがまぎれもない今の私たちの関係性だからだ。お互いに一番ではないからこそ、他に想う人がいるからこそ成立する関係。二番目同士の関係。
そんな危うい関係でも、その時の私にとってはそれなりに愛おしいものだった。
「このあと、どうする?」
何気なさを装いながらマサトが言う。
「あぁ、うん。いいよ」
「おっけ、じゃあ行こう」
そうして私たちは居酒屋を後にした。
つづく(58話:初めての体験)
客観的に見るととても不思議な関係ですね。お互いにお付き合いしている相手がいないからこそできたことだなと思います。
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
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