草食系男子の3年間 67話:話し合い~ななお編~

こんにちは、ななおです。

お久しぶりです。(;^ω^)

前回はこちら、草食系男子との3年間 66話:始まり ~ななお篇~

それでは、続きをどうぞ。

話し合い

 

しげきから告白をされてから一晩がたつと、私は、自分が素直にこの関係を喜べていないことに気が付いた。

3年越しにしげきと付き合うことができたのに、なぜだかそれを嬉しいと思えない、心のしこりがあることに気が付いたのだ。

それは、上機嫌なしげきが昨日教えてくれた、私の知らない話に起因していた。

「これ、言ったほうがいいのかな?」

代官山の駅のエスカレーターを上がりながらしげきが言った。

「え、なに?」

「いや、でも、どうしよう。でも一応部活のことだしな」

「なに?気になるじゃん」

そう私が問い詰めると、変わらず上機嫌な様子でしげきが口を開く。

「俺、山内に告白されてたんだよね」

「え、恵理?」

そう言いながら、期末レポートを書いている時の恵理のことを思い出した。確かにあの時の恵理はしげきのことが気になっている様子ではあった。

「てか、一年くらい前からデートに誘われててさ。今年はバレンタインも貰ったんだよね」

その言葉にドキリとした。

「…随分前からだね」

「そうなるかな?一年前にさ、ななお俺のこと映画に誘ってくれたじゃん。あれ断ったの、実は先に山内に誘われて断った後だったからなんだよね。」

飄々と話すしげきに反して、私は思わず眉根が寄ってしまう自分を抑えられなかった。

身近な人同士の自分の知らなかった出来事を知ってしまったことに加えて、自分が思っていたよりも、恵理がしげきに対して本気だったからだ。

 

私が知らなかっただけで、恵理はしげきに対して少なくとも一年間は片想いをしていることになる。

けれどそんな恵理に対して、私はどうしても「敵」だとか「ライバル」だとか思うことはできなかった。

むしろ、誘いを断られながら一年間も片想いを続けた恵理のその気持ちの方に想いを馳せてしまっていた。

そして長い間同じ人に片思いをしていた私だから分かるその気持ちを、恵理が私と同じように持っていたことにショックを覚えたのだ。

「恵理には、私達が付き合ったこと言うの」
固い声でしげきに聞くと、

「そうだね、その方がいいと思ってる。後で俺から連絡しておくよ」

その言葉を聞きながら、事実を告げた方がきっと恵理のためになるはずだと言い聞かせる自分がいた。

「そっか、分かった」

「あとそれから」

また続きがあると言うようにしげきは続ける。

「俺、去年の夏に実菜と付き合ってたんだ」

悪びれる様子もなく、笑顔のままでしげきが言う。

「実菜?ってあの、バイト先の?」

実菜と言えば、バイト先のムードメーカーで、私もバイトを辞めるまではそれなりに仲良くしていた、あの子だ。

「そう。ななおがバイト辞めたあと、何度か飯に誘われてさ。あでも結局2カ月くらいで別れたんだけどね」

しげきが言葉を発するたびに上手に受け止め切れない部分が増えていく。

「え、実菜とそんなに仲良かったっけ?」

確かにグループでの飲み会は何度もしたけれど、しげきと実菜が特別仲が良かったという印象はなかった。

「二人で遊びに行ったらなんかいける気がしたんだよね。でもすぐ別れたけど」
自虐のように、「すぐに別れた」としげきはいう。けれどそれが一層私の中のモヤモヤを増やしていく要因になっていた。

「…なんか、ムカつくわ~」
けれど駅の中ではそんな簡単な言葉しか出せなかった。
自分の中のモヤモヤが一体なにを意味しているのか分からずに、苦し紛れにそんな言葉だけが出てきたのだった。

そんな、昨日の時点では上手く言葉に出せなかったモヤモヤが、一晩経って少しずつ私の中で整理されてきたようだった。

今ならきちんとしげきに思っていることを伝えられるような気がした

『付き合えたのに、全然嬉しくないんだけど』

そうラインをしてから、しげきに電話を掛けた。

「どうしたの」

電話口のしげきの強張った表情が容易に想像できた。

「恵理には私たちのこと、伝えたの」

「うん、昨日伝えたよ。部活行きたくないとか、ななおに会いたくないとか、言ってた」

その言葉を聞いて、より一層心の重みが増した気がした。

「付き合えたのに、昨日からずっと、嬉しくないんだよね。例えば恵理の話だけど、一年前から気持ちを知ってたのに、きちんと断らなかったの?」

「それは、ちゃんと断ったよ」

心外だというように、しげきが声のボリュームが上がる。

「何て言って断ったの?」

しげきの断り方は、信用できない。

私自身「後輩だから」という理由で何度ごまかされそうになっただろうか。

そんな言い訳じみた言葉ではなくて、断るなら本気で断ってくれなくては、本気で好きになった方は引くに引けないのだ。

「デートしましょうって言われたから、俺はななおのことが好きだから出来ないって言ったよ」

「それで、恵理はなんて言ったの?」

「もし朱里さんと付き合えなかったら私とデートしてくれますか、って」

「それで?」

少し間があって、しげきが言った。

「俺が卒業するまでにななおと付き合えなかったら、デートしてもいいよ、って言った」

それを聞いて一人でに大きなため息が漏れていた。一言で言えば、悲しかった。

しげきがどこまでも卑怯な断り方をしたこと、しげきの言葉を聞いて期待してしまった恵理の気持ち、その期待が裏切られて私へ怒りを向けてしまった恵理のこと、結果的に素直に嬉しさを味わえない今の自分、それらのことを考えると、悲しみと、どうしてこうなってしまったのだろうという、ぐちゃぐちゃしたやり場のない気持ちに襲われた。

その中には、どうしてしげきを好きになってしまったのだという、恵理に対する理不尽な怒りもあった。

「どうして、そんなこと言ったの」

深いため息をついたあとに、感情を抑えながら淡々とした声音を取り繕って聞く。すると、

「興味がないって言う方が、相手に失礼だと思ったから…」

自信なさそうにしげきが言う。それを聞いて抑えていた怒りがこみ上げる。

「違うよ。しげきのそれは優しさじゃなくて、自分を守ってるだけだよ。恵理に嫌われたくなくて中途半端なこと言って、結果的に相手を傷つけただけじゃん。しげきはただの八方美人だよ」

一気にまくしたてると、電話口でしげきが黙り込む。

「そう、なのかもしれない」

しばらくしてポツリというしげきに、また悲しくなった。
どうしてそんな簡単なことが分からなかったんだろう。
どうして本気で自分を好いてくれている相手に、そんな卑怯な態度が取れたのだろう。

「しげきはずるいよ。自分だけ適当なこと言って逃げて、恵理のこと傷つけて。でも恵理はしげきのこと好きなんだから、しげきと付き合った私のことを嫌いになるに決まってるじゃん。恵理とはずっと仲良くやってきたのに、どうして嫌われないといけないの?なんで、3年間ずっと好きだった人と付き合えただけなのに、他の人に恨まれて、肩身の狭い思いをしないといけないの?」

悲しさと悔しさと怒りとかどんどん溢れてきた。

「しげきのこと、そんな人じゃないと思ってたよ。私の知ってるしげきじゃないみたい」

言いながら、涙がこぼれ始めていた。

つづく…

 

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