こんにちは、ななおです。
前回のお話はこちら(2話:ウワサの先輩)です。
目次はこちらから。
今回は3話です。どうぞ♪
揺れる心
「しげき」
この3文字が浮かんだとき、お腹の奥の方がザワっとした。
けれども次の瞬間、
「でも、ほのかはどうするの?」
という声が聞こえてきた。
そうだ、私はついさっきまでほのかの恋愛を応援していたのに、私がしげきと2人で出かけたら、それはほのかを裏切ったことになる。
そうしたら、ほのかは一体どう思うんだろう。
けれどもまた次の瞬間、違う声が聞こえてきた。ザワリと動いたお腹の奥の方から聞こえてくる声だ。
「でも、ほのかの“好き”は本気の好きじゃない。どうせ恋に恋してるだけじゃない」
その声を聞いて、妙に納得してしまった自分がいた。
確かに、ほのかは本気でしげきを好きなわけじゃない。
「先輩に恋をする」という目的のために、ちょうどいい相手として選ばれただけだ。いうなれば、ほのかにとって、しげきは手段であって目的ではない。
「だったら、良いのかな」
そう呟きながら、それでもどことなく罪悪感がぬぐえなかった。
私とほのかはそれなりに馬が合っていて、ほのかの恋愛話を一番聞いていたのは私だし、ほのかがしげきと話しやすくなるように一番気を遣っていたのも、多分私だ。
だから、ほのかはきっと私を信頼しているだろう。
「でも」
やはりお腹の奥の方からの声が言う。
「でも、別に私はしげきとデートをするわけじゃない。ガールズバーがどんなものか偵察に行くだけだし、そのためにしげきにちょっと付き合ってもらうだけ。だから、別にやましいことはない」
お腹の奥からの強い主張に、ほのかの側に立つ声が徐々に小さくなっていく。
そうだそうだ、別にデートをするわけじゃないんだから、きっと大丈夫。ほのかにもちゃんと説明すればいいし。
そうして、私はしげきをガールズバーに誘うことに決めたのだった。
『ガールズバー、行ってみない?経験値として、そういうとこ行ってみたくない?』
6月のある日、しげきにメールをした。
しばらくして、
『いいね!俺も経験積みたいし、行ってみるか!』
あっけないとも思えるほど、あっさりと快諾する返信が送られてきた。
「しげきも行きたがってるんだから、まぁいっか。ていうか、そもそもガールズバーに行くのにデートもなにもないよね。女の子のいるお店に行くんだし。」
そのときにはもう、ほのかに対する遠慮はほとんどなくなっていて、しげきとガールズバーに行くということが楽しみになっていた。
その後はトントン拍子に話が進んで、一学期の授業が終わった直後の、6月末に行くことにした。
そして偶然その日は、剣道部の留学生がアメリカに帰る日でもあったので、部活の何人かでお見送りに行くことにもなっていた。
だから、私としげきはそのお見送りが終わった足で、そのままガールズバーに行くことにしたのだった。
大学に入学して初めての学期はあっという間に過ぎていき、すぐに約束の日の前日になった。
『明日、先輩と出かけるんだけど、どんな服装がいいかな?!あと髪型も!』
前日からソワソワした気分が止まらなかった私は、高校時代の剣道部のグループラインで思い切りノロけていた。
『花柄のスカートが可愛いから、トップスは白いの合わせたら?』
『髪は先っちょだけ巻いたらいいと思う!』
そんな私に、高校時代の同期達は色々とアドバイスをしてくれた。
中高一貫の女子校に通っていた私は、それまで男性とろくにデートもしたことがなかった。だから、私よりも一年早く大学に進学し、男性との恋愛を経験している彼女たちは、とても頼れる先輩たちだった。
一通りアドバイスをもらい翌日着る服を丁寧にたたんだあと、浮かれる心を落ち着かせるように深呼吸をした。ドキドキが止まらなかった。
客観的にみればこの時の私は確実に、「好きな人とデートに行けることを楽しみにしている女の子」だっただろう。
けれどもこの時の私には、お腹の奥でザワザワとするものの正体が恋心であることに、ほとんど気づいていなかった。
だからこそ、なぜほのかに対してこんなにも罪悪感を抱いてしまうのかもはっきりと自覚することができずにいた。
それはきっと、私がろくに恋をしたことがなくて未熟だったのもあるだろう。
いずれにしても、この時の私はまだ「しげきとガールズバーに偵察に行くだけ」と本気で思い込んでいた。
そして、相反する気持ちを抱えたまま、翌日を迎えたのだった。
つづく(4話:初デート)
以上、3話でした!
この時は本当に未熟で、自分の恋心になかなか気づけずにいました。ほのかに対する遠慮もあったのかもしれませんが…。いずれにしても、心の奥の方の気持ちと、表面上の気持ちとが全然違う方を向いていた時期でしたね。
でもこれが、しげちゃんとデートすることで大きく変わってしまうのです…。
続きは4話で^^
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
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