草食系男子との3年間⑲:気づき ~ななお篇~

 

こんにちは、ななおです。

前回はこちら(18話:自立への一歩)から。

目次はこちらから。

 

気づき

 

9月の頭にしげきに振られてから数か月、私は自分自身の生き方そのものを見直していた。

 

そしてそれと同時に、あまりにもしげきのことを理想化しすぎていたのではないかとも反省するようになった。

少し冷静に考えてみると、それまで目につかなかったしげきの嫌なところや未熟なところをいくつも数え出すことができた。

友達に話すと「早く次の人探したら?」と言われたりもして、しげきの色にだけ染まっていた世界が、少しずつ自分の色に戻ってくるようになった。

 

 

そうして恋は盲目な状態を抜け出して、もう一度しげきのことを考えることができるようになった。

すると、しげきのことを考えて私の心がトキめくことは無かった。

ドキドキすることも、胸が締め付けられるように痛むこともなかった。

 

その代わり、心の奥の方からじんわりとした温かさがにじみ出てくるのを感じた。

それはしげきに対する愛情というよりも、私が私らしく生きていられる源のような温かさだった。つまり、心がどこかに飛んで行ってしまうようなふわふわしたものではなく、私が今ここに生きているという確かなエネルギーそのものだった。

しげきのことを考えるだけで私は、温かで確かな、自分自身のエネルギーが心の中いっぱいに満ちていくことが分かった。

 

それは本当に穏やかでさり気なくて、自分でも、

 

「これは恋なのか?」

 

と何度も自問自答しなくてはいけなかった。

けれど、何よりも確かなのは、

 

「私にとってしげきがとても大切な存在である」

 

という、そのことだった。

 

 

私はしげきのことをとても好きになったし、振られた今でも、おそらくはまだしげきのことが好きだ。

けれどそれは、しげきと付き合いたいとか振り向いてもらいたいとか、そういう気持ちではなく、しげきが存在してくれていることへの感謝の気持ちになっていた。

なぜなら、しげきがいて、そんなしげきのことを好きだと思えるからこそ、私は自分の中に温かなエネルギーを満たすことができるからだ。

 

 

だから振られた後も、確かにしげきは私の太陽だった。

暗闇に逆戻りしたように思った時期もあったけれど、よくよく辺りを見渡せば、しげきがいるというそれだけで、私の世界は確かに明るくなっているのだった。

そしてそれは、しげきに振られた後も、彼に他に好きな人がいても、変わらない事実だった。

 

 

 

しげきは私の太陽だ。

 

でも、私の人生において、本来の太陽は誰だろう?

 

もしもしげきが私の人生からいなくなってしまったら、私の世界は再び暗闇に戻ってしまうのだろうか?

 

そんなはずはない。

 

私の人生において、本当に光を持って世界を明るくすることができるのは、私自身しかいないはずだ。

 

だから私は、私自身が太陽になれるようになりたい。

 

誰かの光を浴びてやっと輝ける存在ではなく、自分1人でもしっかりと輝ける太陽になりたい。いや、なる。

 

そしてそうでなければ、本当の意味で自立しているとは言えないだろう。

 

 

私の大切な人は、「太陽」から「目標」に変わった。

しげきみたいに、光を周囲に配れる人になりたいと思った。

 

「自立」とは、自分の力で自分の人生を明るくすることができる人のことだ。つまり、自分らしい温かなエネルギーでいつでも自分自身を満たすことができる人のことだ。

 

そのことに気が付いたとき、私は大きく変わったのではないかと思う。

 

そしてそんな気づきを得られたのは、とっくに年も明けた2月のことだった。

 

つづく(20話:見えない糸

 

私はしげきに片思いすることで、自分自身が大きく変われたと思います。そしてその中でも一番大きく重要な変化が、「自立」の問題だったような気がします。

 

 

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