草食系男子との3年間㉜:キャバクラへ ~ななお篇~

こんにちは、ななおです。

前回はこちら、31話:迷いから。

目次はこちらから。

今回は読んで少し嫌な気持ちになる方もいるかもしれませんので、注意してお読みくださいね。(エログロではありません)

 

キャバクラへ

 

 

「私、キャバクラで働いてみたいなぁ」

 

バイト帰りの駅のホームで、少し冗談めかして言った。

最初は笑っていたしげきも、徐々に本気の言葉であることが分かったようで、少し焦り始めた。

 

「え、やめた方がいいんじゃないの?危なくない?」

 

「そうだねぇ、でもやってる友達何人かいるしなぁ」

 

「いや、でもやっぱり危ないよ、大変だっていうし」

 

「まぁねぇ、もうちょっと考えてみる」

 

そんなやり取りをしながら、私のためにしげきが焦ってくれていることにわずかに喜びを覚えていた。

本当は、しげきに話した時点でほぼ心は決まっていた。
やるべきかやらないべきかを相談したかったわけではなく、自分がこれから進む道すじを、ただ誰かに打ち明けたかったのだ。

いや、誰かではなく、しげきに聞いてほしかったのだ。

 

私がキャバクラを考え始めた時に相談相手として思い浮かんだのは、亮太ではなくて、しげきだった。

付き合っている彼氏に対して「キャバクラで働いてみたい」なんて言えるわけもなかったし、なにより、亮太との関係に悩んだ末の選択だったから、亮太に相談するなんてことは考えもしなかった。

 

けれど、だからといってなぜしげきなのか?と言われたら、きっとこの時の私は上手く説明することができなかっただろう。本当は女友達でも良かったはずだし、むしろそっちの方が適任だ。

それにもかかわらず私はしげきを選んだ。いや、しげきしか思いつかなかった。

 

『簡単な気持ちで手を出していい職業じゃないと思う』

 

家に帰ってから、しげきからラインが届く。

分かっている。そんなことは。そうした世界にどんな危険が潜んでいるのかも、一通り調べたし、水商売や風俗店で働く人の手記なども読んだ。

けれどもそうしたことを調べていくうちに、彼女たちは実は世間で言われているほど、おかしな人達ではないのではないかと思うようになった。そしてそんな人達が生きている世界そのものに対して、興味を抱き始めた。

私も一度、経験してみたいと思った。それで恋愛について少しでも分かるようになるのなら、一石二鳥じゃないか。

 

最終的には、気に入ったホームページにメールを送り、店の店長から返信がきたことで全てが決まった。その後は自分でも予想以上にとんとん拍子にことが進み、入店の準備をすることが決まった。

 

『キャバクラで働くことが決まった』

 

そうしげきに伝えると、

 

『ななおが本気でやろうと思うなら、俺は応援するよ』

 

という返信だけが来た。

その言葉の裏にどんな気持ちが隠されていたとしても、私がやろうとしていることをしげきが知り、応援してくれている。これ以上に心強いことはなかった。

 

その一方で、不思議なくらい、亮太に対する罪悪感が無かった。万が一ばれてしまったとしても仕方がない、そう思っていた。

 

今から思えば、これはれっきとした現実逃避だったと思う。
亮太との関係が分からないくなり、恋愛そのものが分からなくなった私が、それらしい理由をつけて、本当に取り組むべきことから逃げていただけなのだと思う。

 

つづく(33話:中身のない箱

 

今から思っても、この時の私はダメな人間だったと思います。キャバクラのことを話した数少ない女友達からは、「私だったら彼女にしたくないわ・・・」とはっきり言われたくらい、亮太には悪いことをしたと思います。

 

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