草食系男子との3年間 52話:相反する気持ち ~ななお篇~

 

こんにちは、ななおです。

前回はこちら、51話:ありえない偶然から。

目次はこちらから。

 

相反する気持ち

 

 

『先輩と遊んできたー。楽しかったけど、今付き合いたいかって言われると違う気がした』

 

しげきとデートをした翌日、マサトにラインを送る。

この気持ちは決して嘘ではない。確かにしげきと一緒の時間は穏やかで、楽しくて、自分らしくいられるものだった。2年半前からずっと変わらない、私の大好きな時間。けれどそれはマサトに感じるようなときめきや、心臓を揺らすような妖しい心の動きをもたらすものではない。

その時の私は、温かな陽だまりよりも、ころころ変わるスリリングな曇り空を味わいたかった。

 

『そうなの?残念だね』

 

めずらしく早めに返ってきた返信に心臓がとくりと動く。私としげきの関係性を少しは気にしているんじゃないか、そんなことを期待した。

 

『残念なのかな?でもなんか、結婚式してる人たちがいて、幸せそうでいいなあと思った(笑)』

 

自分が見た幸せの断片を、マサトにおすそわけする。もちろん、あなたはどうですか、という意味を込めて。

 

『俺、今度元カノと飯行くわ』

 

突如として送られてきた言葉。それは一見脈絡がないように見えて、しっかりと私の真意に返答している簡潔な言葉だった。

ああそうか、マサトはやっぱり元カノのことが好きなのだ。どんなに卒論が忙しくても、どんなに私なんかと遊ぶ遊ぶ余裕がなくても、彼女との時間だけは確保するほどに。

 

『そうなんだ、良かったじゃん』

 

決してかっこつけて言ったわけではない。私がしげきともマサトともデートしているように、2年半もしげきを好きでいながらマサトにも強く惹かれているように、マサトにはマサトの意志があり、自由がある。それを他人である私が否定するなんて権利、持ち合わせているわけがない。

 

『いつ行くの?』

 

『12月18日』

 

『クリスマス近いね。ただのデートじゃん、モテ男めw』

 

マサトが元カノと遊びに行きたいなら、それで構わない。でもその分、ちょっとした嫌味くらいなら、言ったって構わないだろう。

 

『モテてたら彼女いるでしょうに』

 

『デートするじゃん』

 

『友達に戻れたらそれでいい。高望みはしない』

 

マサトの本音がこぼれたように感じた。
その何気ない一言には、彼の張り詰めた気持ちが充たされている。

どうして、どうして、やっぱりこの人は、こんなにも彼女のことが好きなんじゃないか。

急に悔しさが胸に押し寄せる。

そして私の中で、違うスイッチが入った。

 

『そんなに好きなら、諦めちゃだめだよ』

 

悔しくなる。

どうしてこんなにも好きな人を、諦めなくてはいけないのか。何でもないふりをして、「友達でいい」なんて嘘、つかなくてはいけないのか。

 

『向こう就職地方だし、仕方ないって』

 

嘘だ。そんな言い訳してみたって、自分の本当の心は騙せないくせに。

 

『今すぐは無理でも、長期スパンでいけばいいじゃん』

 

『それな。まぁ、結婚はしたいよなー』

 

マサトの方も元彼女への気持ちに開き直り始めたようだった。

ついこの間は「未練はない」なんて言っていたのに、今は結婚なんて言葉を出してくる。それくらいマサトにとって元彼女は大切な存在なのだ。

 

『そんなに好きなら、余計諦めちゃいけないと思う!』

 

余計なお世話だなんてこと、分かっている。けれど私はその気持ちを知っている。他人事だと思えないのだ。

 

『無理な夢だよ、夢のまた夢(笑)』

 

マサトの言葉に私の胸が痛む。こんなにも素敵な人が、叶わないと思いながらも、こんなにも誰かを一途に想っている。悔しくて、悲しくて、けれどそれはとても、美しかった。

その瞬間、心のスイッチが再びOFFになる。こうしてやりとりをしている間にも、私はマサトに惹かれていく。

 

自分の中に、何層にも重なり合うように心のひだが存在している。しげきを想う心。マサトの恋を応援する心。そして、そんなマサトに惹かれる心。

 

うすうす、自分でも分かっていた。

どんなにマサトに惹かれたって、私が何よりも求めているのは、しげきだ。
マサトの代わりはいたとしても、しげきの代わりになる人は私の人生において、きっともう現れることはない。それはおそらく、マサトにとっての元彼女のように。

けれどそれでも、マサトへの気持ちを抑えることは難しかった。そんなしげきへの気持ちを一旦脇においてまで、マサトとの関係性を手に入れたいという抑えがたい情熱が、確かに私の中にあった。

それはマサトの恋がうまくいくようにと願う今でも、変わることなく燃え続けている。

 

つづく(53話:クリスマスの約束)

 

この時期は自分の中にたくさんの方向の違う本音があって、自分でも結構困ってましたね(笑)せっかくしげちゃんとデートに行けたというのに、恋とは難しいものです。

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