こんにちは、ななおです。
前回は52話:相反する気持ちから。
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クリスマスの約束
大学の帰りに何気なく本屋に立ち寄った。普段は通らない道を深く考えずに歩くと言うのも、楽しいものだ。
目的もなく本屋の中を練り歩くと、すぐに平積みになった文庫本が目に入る。それは表紙に漫画でイラストが描かれている、うすっぺらい本だった。手に取ってパラパラと開いてみる。とても読みやすそうだ。
帯には「映画化決定」の文字が踊り、すぐ隣のテレビ画面でその本の映画版だと思われるものを繰り返し予告していた。
それを眺めていると、なんとなくその本を買いたい気持ちになった。あまり衝動買いというものをしないタイプなのだけれど、その時はその本を買うことが正解であるような気がした。
家に帰って、あっという間に本を読み終えた。ものの数時間だったのではないかと思う。
私は感動していた。
登場人物たちの熱い思い、誰かを一途に想う気持ち、そして手に入れる、穏やかな日常。身近な人を大切にし、感謝し、愛おしみたい気持ちになる。本を閉じて「映画化決定」の文字を再び確認すると、これは映画も見るべきではないかと思った。すると、
しげきと観たい。
すぐにそう思った。そしてその想いは正しかった。私はこれを、他の誰でもない、しげきと観るべきだった。
『これ、見たいんだけど、一緒に行かない?』
『いいよ、いつにしようか?』
相変わらず、別人のようになったしげきが誘いを快諾する。
『12月13日とかは?』
『ごめん、空いてない。19日は?』
『私が空いてないわ』
難しい顔をしてスケジュール帳とにらめっこをする私の指が次になぞった先は、24日だった。12月24日。
予定は確かに、空いている。けれどまさかこんな日に、付き合ってもいない相手とデートになど行っていいのか。いやそもそも24日を打診されたら、さすがのしげきでも引くのではないか。
一瞬、葛藤をした。そして、送った。
『24日空いてるんだけど、どう?』
嫌なら嫌だと言ってくれればそれでいい。ただ予定が空いていたから打診しただけで、その日じゃなきゃダメなんてこと、全然ないのだ。そう、自分に言い聞かせる。
『俺も空いてる、じゃあその日にしようか』
意外にも、すんなり決まった。
私はしげきと、12月24日に2人で映画を観に行くことになったのだ。
この時、2年前にしげきに振られ絶望の中にいた自分に言ってあげたいと思った。「あなたを振ったその人と、2年後のクリスマスイブに、デートをしているよ」と。
つづく(54話:ホテル行こうか?)
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
そんな私ですが、心に余裕を持つことで大逆転を果たし、彼に告白されるまでになりました。
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