草食系男子との3年間㉖:池袋デート ~ななお篇~

 

こんにちは、ななおです。

前回はこちら、25話:嫌いから。

目次はこちらから。

 

池袋デート

 

 

部活での不満が溜まったころに私は長野さんと出会ったのだった。

だからそんな不満を、オブラートに包みながらも長野さんとのラインで愚痴っていた私は、

 

『今度ちゃんと会って、部活の相談会でもしようか?』

 

という長野さんの誘いに、喜んで応じたのだった。

 

 

最初のデートは池袋だった。

長野さんのチョイスしたイタリアンレストランは、こぢんまりとしている中に、こ洒落たシャンデリアがいくつもぶら下がっていて、カジュアルにオシャレだった。

 

「ここ、素敵ですね!」

 

素直にそう口にすると

 

「ネットで調べたんだよね」

 

と彼は照れくさそうに言った。

少し驚いた。デート相手の女性の前で、男性はちょっとかっこつけるものだとばかり思っていたから、正直にそんなことを言うとは思わなかった。

けれど様子を見て、きっとこの人は飾らない正直な人柄なのだろうと思った。

知ったかぶりをしてかっこつける人より知らないことは素直に知らないと言える人の方が良いに決まっている。

 

 

食事をしながら色々な話をした。私の趣味の話もしたし、今大学でどんな勉強をしているのか、どんなことに感心があるのかも語った。
長野さんはどんな話をしても興味深そうに聞いてくれるから、どんなことも話してしまえた。

 

彼の話もたくさん聞いた。
長野さんは東大で野球をしたいがために、仮面浪人をしてまで受験し直したそうだ。
スポーツ推薦組がレギュラーを占めてしまう他大学に比べて、全員が入試で入っている東大でなら、レギュラーになれるチャンスがあるのだと言う。そしてそこでレギュラーになれば、レベルの高い他大のチームと戦うことができるのだそうだ。

 

「まぁ、浪人はきつかったけどね。東大落ちて慶應に入ったんだけど、やっぱり野球がしたくて、結局部屋に引きこもって仮面浪人してた。だから慶應では友達一人も作らなかったな」

 

そう、さらりと言い切った彼の顔を、思わずまじまじと見てしまった。

 

充実している今だからこそ話せているのだろうけど、当時は想像もつかないくらい追い詰められていたに違いない。

地方出身の長野さんがたった一人で出てきた東京で、友達も作らず引きこもって勉強したって、翌年に必ずしも東大に合格できるかなんて分からないはずだ。それこそ万が一失敗していたら、単位も取らずに過ごした1年がまるきり無駄になるところだ。

 

しかし長野さんはそんな恐怖に打ち勝ってしっかりと結果を出すことができたのだ。それは純粋にすごいことだと思った。
そして目の前に座る日焼けした青年に対して、急激に尊敬の感情がわいてきた。

 

「すごいですよ、多少時間はかかっても、きちんと結果を出してるんですから、すごいです」

 

そういうと、ちょっと嬉しそうに、けれど照れた様子で彼は笑った。
その笑顔はやっぱり飾り気がなくて、素直な笑顔だった。

 

 

初デートは確実に長野さんの印象を良くした。
彼は苦労や挫折を知っている。だからこそ下手にかっこつけることもしないし(というかそんなことをしても意味がないことを知っているのだ)、偉そうな態度を見せることもない。精神的に大人なのだ。

 

部活でのしげきの幼さにイライラしていた時に、大人な態度の長野さんを見て、余計に惹かれたというのもあったかもしれない。

 

いずれにしても長野さんを素敵だと思い始めていたのは確かだった。

 

つづく(27話:和解

 

しげきの未熟さが見えている時期に、成熟した雰囲気を持つ長野さんに出会ったというのも、タイミングって大事だなぁと思います。

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