こんにちは、ななおです。
前回はこちら、59話:落ち着く人から。
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タイムカプセル
一月の中頃、部活が終わったあと、私としげきは人気のない大学の一角にいた。
そこは普段から人通りが少なく、掘り返すのに丁度良い土もあったので、そこに年末から約束していた未来への手紙を埋めることにしたのだった。
「どんなこと書いたの?」
透明なビンに手紙を詰めながら、いたずらっぽい顔をしてしげきが聞く。
「えっ、教えないよ、そんなこと」
慌てて内容を話すことを拒否する。
実際私は、ロマンチックなことなんて全然書かず、今後の人生への願望や現時点での未来予測などという、結構本気のものを書いたので、人に話すには少し恥ずかしすぎる内容だった。
きっと30歳の自分がそれを読んだら、笑ってしまうか、呆れてしまうんだろう。
「できたっ!」
土の中で開いてしまうことがないように、ビンの蓋を固く固く締めたしげきが満足気に声を上げる。
それを見ながら私は、そんなに強く締めたら将来開けられなくなるんじゃないかな・・・なんて心配をする。
作業を進めているうちに日が暮れ始めて、辺りが暗くなり始める。真っ暗になる前に、早めに作業を終わらせなければいけない。
「スコップ貸して」
「はい」
しげきにスコップを渡した時、ほんの一瞬、しげきの指先に私の指先が触れた。
その瞬間、ドキっとした自分がいた。
顔や態度には出さないようにしたけれど、私にはそのことが大きな意味を持っているように感じた。
つまり、マサトと性的な行為をしても何も感じなかった私が、しげきに対しては、指先がほんのわずかに触れただけで心が大きく揺れたということだ。
そして思った。
私はやはり、しげきのことが好きなのだ。マサトに対しても確かに強く惹かれていたけれど、それは一過性のものに過ぎなくて、もうすでにそのブームは過ぎ去ろうとしている。
今でもマサトに会いたくなる時は確かにあるが、実際にどこに行きたいかと聞かれると、不思議と特に行きたいところはない。だから結局、私はマサトに連絡をとることをしていないのだ。その先があまりにも見えなさすぎるから。
けれどしげきは違う。
もう出会ってから2年半以上経つのに、今でもしげきと一緒にいると楽しくて、しげきと一緒にやりたいことが後から後から湧いてくる。今だって8年後の未来にまで続くイベントを2人で作りあげていて、そして私はこれからも、しげきと一緒に色々なところに行って思い出を作りたいと思うのだろう。
「写真撮っておこうぜ」
すっかり暗くなった中で、携帯の明かりを頼りに土を踏み固めていたしげきが言う。
「そうだね、場所忘れたら大変だもんね」
そういって、手紙を埋めた真上にスコップを置き、フラッシュをたいて写真を撮る。
「なにこれ心霊写真みたい(笑)」
撮った写真は、石碑の裏側と地面につきささるスコップがピントがずれた様子で映っていて、一見すると何をとっているのか分からない代物だった。
けれどそんな写真でも、私達2人にはどんな意味があるのか分かっていて、8年後まで大切に保管しておくべき写真だ。
30歳の私が30歳のしげきとどの程度仲良くしているのか分からないけれど、きっとお互いに、2人で埋めたタイムカプセルを忘れることはないだろう、そう信じようと思った。
つづく(61話:カウントダウンの始まり)
このときに書いたことは、うっすらと覚えていますが、細かいことは忘れ始めています(笑)果たして30歳になったときに、一緒に掘り返すことができるのでしょうか・・・というかちゃんとその場所に埋まっているといいなぁ(笑)
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
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