こんにちは、ななおです。
前回の話はこちら 3話:揺れる心 から。
目次はこちらから。
今回は4話です、どうぞごゆっくり♪
初デート
その日、留学生のお見送りに集まったのは新入生の女子5人としげきだった。
昨日のラインで高校の同期におすすめされた花柄のスカートを履いていくと、
「このスカート可愛い~!」
と女子が褒めてくれ、「ありがとう」と照れながらも、この後しげきと出かける、なんてことはまだ誰にも言っていなかった。
そんなところに、ちょっと遅れてしげきが来ると、そこにいたみんながザワついた。
「え、なんかしげきさん今日オシャレしてない?」
「なんで?いつもと違くない?」
その日、しげきはきれい目なチノパンに、Tシャツの上にジャケットを羽織っていた。普段部活で見かけるしげきはジャージによれたTシャツだったので、普段とのギャップにみんなが驚いていた。
「しげきさん今日どうしたんですか?」
大きく声をあげるサヤカの声に照れたように笑いながら、しげきがチラッと私の方を見る。2人だけの秘密をこっそり共有されたようでとても嬉しかったのと同時に、急に全身が熱くなってきてしげきを直視することができなくなってしまった。
思わず一人、後ろを向いて呼吸を整えようとしたものの、そんな位では全然落ち着かなくて、「ちょっとトイレ!」と言って、慌てて近くの駅ビルに走りこんだ。
ちょっとオシャレをしているしげきを見た瞬間に、今日の約束が「デート」であることに気が付いてしまったのだ。
近くのトイレを探し慌てて個室に入ると、胸に手を当てて大きく深呼吸した。心臓がバクバクしていて、これ以上ないくらい全身が熱い。頬に手を当てても、やっぱりとても熱を持っている。
「落ち着け落ち着け・・・」
個室の壁に手を当てて一人でつぶやく。
落ち着かなくちゃいけない。これから部活のみんなで留学生を見送って、ガールズバーに偵察にいくだけだ。
しかしその瞬間、オシャレをしてはにかんだしげきの姿が思い浮かぶ。
そしてまた、すぐに心臓の音が大きくなる。
「ちがうちがう、とりあえず、留学生を見送るだけ、そうそうそう」
一人でぶつぶつ呟きなんとか鼓動を押さえると、頬の赤みが落ち着いたころを見計らってトイレを出た。
なんでもない風を装ってみんなの元へ戻ると、まだ少し女子がしげきをいじってはいたが、特に何か怪しまれることはなかった。
無事に留学生を乗せてバスが出発すると、改札の方へ歩き出す人々に対し「じゃあ、私たちはここで」と、私としげきは離れようとした。
と、その瞬間、
「えっどこ行くんですか?!」
ほのかが声を上げた。
やっぱりそうなるよな、と思いつつ、「たいした事ないよ、ちょっと出かけるだけ」と言ってごまかそうとしたが、
「なんで?2人で行くんですか?どこ行くんですか?!」
とほのかは収まらない。
しげきと顔を見合わせたあと、仕方なく、
「ガールズバーに行くんだよ。ほのかそういうとこ興味ないでしょ?」
と言うと、
「興味ないけど、でも大丈夫!はじっこで大人しくしてるから私も行きます!」
と、食い下がる。
しかし結局ほのかは夜まで時間が空いていなかったこともあり、最終的には「今度花火大会行こうね!」と言い残して、改札の奥に消えていった。
ほのかがいなくなった後、しげきと顔を見合わせると、
「今のすごかったね」
と言って笑いあう。さっきまであんなにドキドキしていたのに、ほのかの衝撃で、いつも通りの自然な雰囲気に戻ることができていた。
その後、ガールズバーに行くにはかなり時間があったので、軽く散歩をしてからカフェに行き、2時間くらいくだらない話をしたあとに早めの夕食を取った。
やっぱり私としげきは当初から気が合ったようで、それほど長く一緒にいても全然会話がつきなかった。2人して大爆笑するようなシーンも何度もあった。2人で一緒に話していると、純粋に楽しかった。
夜になり、そろそろ目当ての店に行こうとガールズバーへ向かう。
店の前に立った時、なんとなく怪しい雰囲気を感じて戸惑う私の隣で、「なんだ、思ったより普通じゃん」といって、しげきはさっさと扉を開けた。
入ってみると、薄暗い店内はあまり大きいとは言えない広さだった。正面には長いカウンターがあり、その奥にお姉さんが2人いる。左側にはダーツができるスペースがあった。
こんばんは、といってカウンターの左の方に並んで座ると、お姉さんがメニューを差し出してくれる。カウンターの右の方には頼りなさそうなサラリーマンが2人ほど座っている。
それぞれ一杯ずつドリンクを頼むと、しばらくしてお姉さんがそれを持ってきてくれたが、目の前のお姉さんにどう話しかければ良いのか分からない。
とりあえず何か言おうと思った瞬間、隣のしげきが言った。
「お姉さん、剣道好きですか?」
私も、そしてもちろんお姉さんも、「えっ?」と言ってしげきを見返した。
正直、めちゃくちゃ恥ずかしかったというのが本音だ。こんな空気の読めない発言を、しかも第一声でそれをしてしまう人が自分の連れだと思われたくなかった。
いくら話すことが見つからないにしても、いくら自分たちが剣道部だからといっても、もう少しマシな絡み方があるだろうと、隣の奴をつねってやりたかった。
「え、あ、や、俺たち剣道部なんですよ、だから・・・」
凍り付いた雰囲気を感じ取ったのか、しげきがごにょごにょと言い訳をする。
しかしそこは「剣道されてるんですね」と、お姉さんが拾ってくれ、そのあとは色々な話をすることができた。
主に私とお姉さんが話していただけだったが、話をしているうちに、ガールズバーのお姉さんもバイトの普通の女子大生であることが分かった。だから、年の近い女の子と普通におしゃべりをしただけ、というのが本当のところだろう。
1時間ほどして店を後にしたが、それなりに楽しんだ私たちは、いい気分で電車を待っていた。
「ガールズバー、普通だったじゃん。バイトすんの?」
ちょっと顔の赤いしげきに聞かれ、
「そうだね、楽しかったけど、バイトしたいとは思えないな。別のバイト探す」
と答えた。
そうして楽しい気分のまま、来たばかりの電車に乗り込んだのだった。
つづく(5話:夢のお告げ)
以上が4話、私たちのちょっと変わった初デートでした。
やっぱり初デートでの最強の思い出と言えば「お姉さん、剣道好きですか?」ですね。これにはもう、たまげました。
草食系はやっぱりコミュ障だということですね(汗)
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
そんな私ですが、心に余裕を持つことで大逆転を果たし、彼に告白されるまでになりました。
私にもできたのですから、誰でも余裕を持つことで素敵な恋愛ができるはずです。
余裕は身に着けることができます。
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