草食系男子との3年間⑨:焦り ~ななお篇~

 

こんにちは、ななおです。

前回の話はこちら(8話:夏祭り)から。

目次はこちらから。

今回は9話です、どうぞ^^

 

焦り

 

しげきに誘われて夏祭りに行き、ほとんどカップルのように過ごした私達は、ほぼ両想いだと思っていた。あともう一押しで私たちは付き合うことになると考えていた。

 

そうして、しげきとの交際が現実味を帯びれば帯びるほど、ほのかの存在が鬱陶しくなっていた。

 

ほのかはまだイギリスに夏季留学に行っており、たびたびSNSを更新しては、イギリスを満喫している様子を発信していた。

 

「も~、いい加減にしてよ・・・」

 

そんなほのかのSNSを見ながら、心の中に黒いもやもやが溜まっていく。

 

今の自分の性格が悪いことは自覚していた。

 

けれど、ほのかがまだしげきのことを好きである以上、自分だけが抜け駆けすることはできなかった。だから、そんな私の苦労も知らずに、イギリスで自分だけのうのうと楽しんでいるほのかに対する苛立ちが抑えられなかった。

 

「早く戻ってきてしげきさんには興味ないって言ってよもー!」

 

一人、部屋の中で大きめの独り言を言い、携帯を脇においてベッドに仰向けに寝転がる。

 

私たちは両想いで、あと一歩で付き合えるはずだ。けれど、ほのかを差し置いて勝手に付き合ってしまうわけにも行かない。

 

仰向けのまま実家の白い天井を睨みつける。

 

上手く行くはずなのに上手く行かない、そんなフラストレーションが確実に溜まっていた。

 

 

そんな気持ちは現実にも確実に反映されていて、8月に入るとしげきと2人で出かけるタイミングが失われてしまった。

 

部活は定期的にあるので、そこで顔を合わせることは頻繁にある。けれど、やはり部活には部活の雰囲気があるし、他の先輩や同期の存在もあって、私たち2人だけでゆっくりする時間はない。

 

むしろ部活の雰囲気でばかり顔を合わせていると、徐々に「ただの部活仲間」という雰囲気に飲み込まれてしまいそうで、私は少し焦っていた。

 

「夏祭りの時にせっかくあんなにいい雰囲気になったのに、このままではただの部活のメンバーに戻ってしまう」

 

そう思ってどうにかしげきを誘い出す口実を作ろうとしたのだが、なかなか互いの予定が合わず、4回目のデートをすることができなかった。

 

そんな中、ある日の部活のあと、しげきに

 

「俺最近、バイト先の人と話すようになったよ!」

 

と、嬉しそうに報告されたことがある。けれども私は、

 

「あ、そう?良かったね」

 

とだけ返し、特に何か思うわけでもなかった。

 

あとから思えば、この時のしげきの発言の真意をきちんと掘り下げておけば、当時のしげきの気持ちが誰のもとにあるのか、分かったはずだった。

 

けれどその時の私は、「バイト先の人と知り合いになれて良かったね」としか考えていなかった。というか、まさかしげきの気持ちが自分以外の人に向いてるなんてことは、思いもしていなかった。

 

そして、しげきと上手く行きそうなのに2人の時間が取れないという事実にひたすら焦りを感じていたのだった。

 

そんな焦りとフラストレーションとともに、8月の前半を過ごした。

 

つづく(10話:三角関係解消

 

以上、9話でした。

8月はひたすら焦っていました。今から思えば、もう少し落ち着いて周りを見渡すべきだったな、と思いますが、この時はもうしげきのことしか見えていませんでした。余裕がなかったんですね(^^;)

 

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