こんにちは、ななおです。
前回はこちら(12話:告白の準備)から。
目次はこちらから。
今回は13話です、どうぞ^^
運命の日
9月一週目の勝負の日は、まだまだ暑いくせに時折思い出したように小雨が降る、微妙な天気の日だった。
待ち合わせの10時よりも早めに鎌倉駅に着いた私は、女子トイレに入って丹念に身支度を整えていた。
アイラインを引き直し、リップももう一度しっかりと塗る。ハーフアップにした髪はきちんと整えてあるし、スカートには汚れもない。
「よしっ大丈夫!」
心の中で掛け声をかけると、胸を張って改札に向う。
「お待たせ」
改札を出ると、すでに待っていたしげきに声をかける。
「おう」
しげきはそう言って耳につけていたイヤホンを外す。
「じゃ、行きますか!」
「おっけ!」
そう言ってそのまま江ノ電に乗り継ぎ、予定通りに江の島に向かった。
駅を降りると江の島へと続く長い道路を歩く。両側には海が広がっていて、水上バイクで遊んでいる人たちが何人もいる。
島に着くと狭い上り坂に土産物屋がぎっしりと並んでいて、それなりに人がいる。
「9月なのにあっついな!ハーフパンツにすればよかった」
人混みの中でしげきが愚痴を言った。
ざわざわした道を早々に抜けて展望台に上ると、そこはあまり混んでいなくて、私達の外には2,3組のカップルしかいなかった。
「おおー、いいね!」
海が好きなしげきはそう言って、身を乗り出すようにして四方の風景を眺め始める。
さっきまで曇っていた空は、今は明るい水色の空に変わっていた。
そんな空を眺めながらも私は、海よりも空よりも何よりも、嬉しそうにはしゃぐしげきの笑顔が嬉しかった。
そしてこの瞬間を残しておきたくなって、遠目からしげきの写真を撮ろうとした。
カシャ、という音と同時に、しげきがこちらを向く。
・・・あ、バレた。
「写真?」
「うん」
「あ、そう。上手くとれた?」
「うん、丁度こっち向いてて、なんか写真集みたいになった」
「マジかw」
そう言って明るく笑うしげきの様子に内心ほっとした。
その時の写真は本当にとてもうまくとれていて、その時から、しばらく私の携帯の待ち受け画面になったのだった。
展望台から降りると、一番奥の洞窟に向う。2人でゆっくりと洞窟を見て回り、洞窟を出たあとものんびり海を眺め、適当な定食屋でお昼を食べた。
時折、しげきの思わぬ発言に2人でお腹をかかえて笑ったり、言葉少なに海を眺めたりもした。
そのどんな瞬間も、とても自然な居心地の良い時間で、本当に幸せだった。しげきと2人でいて、「つまらない」と感じる時間はただの一秒もなかった。
鎌倉駅まで戻ると、竹林で有名だというお寺まで迷いながらたどり着き、迷った時間を取り戻すように、竹林のお庭を何周も歩いた。
そして再び鎌倉駅まで戻ってくると、近くのレストランになんとなく入る。
適当に入ったお店だったが、店員さんの配慮が行き届いていてとても素敵なレストランだった。
ここでもまた私達は「これ食べる?」なんて言いながら、お互いのものを交換こしたりして、本物の恋人同士のようだったと思う。
「ラストは、由比ガ浜だっけ?」
レストランから出た後のしげきの言葉にドキリとする。
「うん。この道まっすぐ歩いて行ったら、着くよ」
由比ガ浜は、浜辺の好きなしげきのためにデートの中に組み込んだ場所だった。
そして、夜に海辺に行くなら告白のスポットはそこしかないと、決めていた場所でもあった。
「おっ。ナイスリサーチ!夜の浜辺か~楽しみだな」
そう言いながらしげきは、いつも通りの雰囲気で私の少し前を歩いていく。
一方の私は、これから目の前のこの人に告白するのだと思うと、少し緊張感し始めていた。
浜辺までの一本道を歩く中、私達はあまり話さなかった。
きっとしげきは特になにも考えていなかっただけで、一方の私は緊張していたからだろう。
ところどころに立つ街灯だけが照らす一本道をひたすら歩く中、何度も、
「しげきの手を握りたい」
という衝動に駆られた。
けれどもそんな衝動が生じるたびに、「そんなことをしていいのか」と躊躇する気持ちも同時に湧き上がり、結局何もすることができなかった。
そんな自分が、とてももどかしかった。
「お、あれじゃね?」
私のもやもやとした思考を遮るように、しげきが嬉しそうな声を上げる。
目の前には由比ガ浜の砂浜が広がっていた。
つづく(14話:過去の話)
この日は私達2人にとって、とても大きな意味を持った日だったと思います。
余談ですが(本文ではしげきの名誉のために変なことは書いてないんですが)、このデート中も、結構しげきはやらかしてくれました。女性と2人でデートしてるのに、それするか?みたいなの(笑)
また機会があったら書いてみますね^^
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私は冴えないアニメオタクでしたが、現在は一途で誠実な彼氏がいます。彼はイケメンの部類ですが、浮気の心配や不誠実さは皆無で、徹底的に一途な人です。
どのくらい一途かというと、週末ななおに会いに来るために新幹線の回数券を買ってくれているくらいです。(現在は、東京―京都間での遠距離恋愛をしています)
そんなことを言うと、ななおは元々見た目が良かったんでしょとか、オタクといいながら実は結構モテてたんでしょ、と思うかもしれません。
しかし実際は、20歳くらいまでメイクやファッションのことは何も知らず、好きだった人に「ブス」などと言われるような人間でした。さらにいうと、彼氏とは今でこそ恋人同士ですが、そうなる前に2度振られた経験もあります。
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